お子様の奥歯は、溝が深く歯みがきが行き届きにくいため、むし歯になりやすい部位の一つです。特に生えたばかりの永久歯は歯質が未成熟で、むし歯のリスクが高いといわれています。
こうしたリスクに対応する方法の一つが「シーラント」という予防処置です。歯の溝をあらかじめ樹脂で塞ぐことで、食べかすや細菌の侵入を防ぎ、むし歯予防につなげます。
本記事では、シーラントの特徴や対象年齢、効果や注意点について詳しく解説します。
目次
■シーラントとは?
◎シーラントの特徴
シーラントとは、奥歯の噛み合わせ部分にある細かい溝を、フッ素を含むレジン(歯科用樹脂)で埋めて保護する処置のことです。溝は非常に複雑で歯ブラシの毛先が届きにくいため、むし歯の温床となりやすい部位なのです。
シーラントを施すことで、食べかすやプラークの付着を防ぎ、むし歯のリスクを下げます。削る必要がない、痛みを伴わないことも大きな特徴です。
◎シーラントの手順
①歯の清掃
専用の器具で歯の溝をきれいにします。
②処理液の塗布
シーラント材がしっかり定着するように処理液を塗ります。
③シーラント材の充填
奥歯の溝に樹脂を流し込み、光を当てて硬化させます。
④噛み合わせの調整
最後に噛み合わせを確認し、違和感がないよう調整します。
このように短時間で完了するため、お子様にも安心して受けていただけます。
■子どものシーラントは何歳から?
シーラントは、奥歯が生えそろう時期に適しています。特に最初の永久歯である「6歳臼歯」が生え始める6~7歳頃が第一の目安です。6歳臼歯は歯並びの一番奥に生えるため、うまく歯みがきができず、むし歯になりやすい歯です。
そのため、早期にシーラントでむし歯を予防することがお口の健康につながります。
また、乳歯であっても溝が深く、むし歯のリスクが高い場合にはシーラントを行うこともあります。歯科医師が、お一人おひとりのお子様の歯の状態を確認し、適切な時期を判断します。
■子どものシーラントのむし歯予防効果は?
◎むし歯のリスクを低減
奥歯の溝は複雑で、食べかすや歯垢(プラーク)が停滞しやすい構造をしています。シーラントはその溝をレジンで封鎖することで、細菌の侵入経路を物理的に遮断します。
特に生え変わった直後の永久歯は、表層のエナメル質が完全に成熟しておらず、むし歯の原因となる「酸」で歯が溶けやすい状態です。そのため、シーラントを行うことで、むし歯の初期発生率を大幅に抑制できるとされています。
◎フッ素配合による効果
多くのシーラント材にはフッ化物が添加されています。フッ素は歯の表面のエナメル質に取り込まれると、フルオロアパタイトという酸に強い結晶を形成するため、歯が溶けにくくなります。
さらに、脱灰(歯質からカルシウムやリンなどのミネラル成分が溶けること)が始まった部分にフッ素が作用すると再びミネラルが取り込まれ、歯の修復(再石炭化)を促進します。
これは、歯質の自然修復力をサポートする重要なメカニズムです。シーラントによる溝の封鎖とフッ素の化学的作用が組み合わさることで、むし歯予防効果は一層高まります。
■子どものシーラントで注意することはある?
◎永久的ではないことを理解する
シーラントは、奥歯の溝を封鎖してむし歯リスクを軽減する有効な方法ですが、永久的に維持されるものではありません。特に歯が生え変わった直後はエナメル質が未成熟で、結晶構造が緻密化する「後成熟」が進む途中にあるため、むし歯リスクが高い時期です。
この期間をカバーする役割が大きい一方で、長期的には日々の歯みがき、バランスの取れた食生活、親御様による仕上げみがきといった基本的なケアが予防の土台となります。
シーラントはあくまで補助的な処置であることを理解しておきましょう。
◎定期的なチェックが必要
シーラントは噛むことや食事の摩耗によって欠けたり剥がれたりすることがあります。剥がれた部分にプラークが滞留すると、樹脂と歯との隙間でむし歯が進行することもあります。
さらに、シーラント材は透明または白色のため、欠損を親御様が見分けにくい点も注意が必要です。そのため、定期的な歯科検診でシーラントの状態を確認し、必要に応じて再充填や補修を行うことが、お子様の歯を長期的に守るうえで重要です。
◎他の治療や矯正との関係
ブラケット矯正中でも、奥歯の溝が深くむし歯リスクが高い場合はシーラントが検討されます。ただし、矯正装置による咬合力の変化や歯列の移動に伴ってシーラントが摩耗・脱離する可能性があるため、慎重な適応判断が必要です。
また、顎の成長や歯並びの変化により噛み合わせが変動する時期でもあるため、シーラント単独ではなく、フッ化物塗布や食習慣指導を含めた総合的な予防管理が求められます。
◎費用と診療区分
シーラントは、条件を満たす場合には保険診療で対応できる処置です。特に6歳臼歯のような萌出直後の永久歯に対しては、むし歯予防目的で保険適用されることが多いです。
ただし、乳歯やすでにむし歯の兆候がある歯に対する処置では自費診療となる場合があります。歯科医院によって取り扱いが異なるため、事前に説明を受けて納得したうえで選択することが大切です。
■まとめ
奥歯はむし歯になりやすく、お子様の将来の歯並びや噛み合わせに大きく影響します。シーラントは歯の溝を樹脂で塞ぎ、むし歯予防に役立つ効果的な方法です。
対象年齢は6歳臼歯が生える頃が目安ですが、歯の状態に応じて適応が変わります。シーラントは一度で永久に効果が続くものではないため、日常の歯みがきや定期検診と併せて行うことが重要です。
お子様の健やかな歯を守るため、歯科医院での予防管理をぜひご活用ください。