
親知らずの抜歯は一般的な処置のひとつですが、下の親知らずが「神経に近い位置」にある場合、注意が必要なケースがあります。
神経に接していると、抜歯時に「神経麻痺」を起こすリスクが高まることがあります。
この記事では、神経に近い親知らずの見分け方やリスク、そして安全に抜歯するための治療法について、名古屋市北区の伊豆歯科がわかりやすく解説します。
目次
■親知らずの抜歯で神経に近い状態とは?
◎親知らずと神経の位置関係
下の親知らずのすぐ下には、「下歯槽神経(かしそうしんけい)」という非常に重要な神経が通っています。この神経は、下唇やあごの皮膚感覚を担っており、日常生活の中での「感触」を感じ取るうえで欠かせない存在です。
親知らずの根の先がこの神経に近接していたり、神経管と重なって見える場合には「神経に近い状態」と判断されます。このようなケースでは、抜歯時に神経への刺激や損傷が起こるリスクがあるため、慎重な診断と計画が必要です。
◎レントゲンやCTで位置を確認
一般的なレントゲン写真(パノラマX線)では、歯や骨の大まかな位置関係を確認することができます。しかし、親知らずの根が神経に非常に近い、または重なって見える場合は、より精密な「歯科用CT(3次元画像)」の撮影が推奨されます。
CT画像を用いることで、親知らずの根の形態、神経管の位置、骨の厚みや密度などを立体的に把握できます。その結果、抜歯の角度や削除範囲を正確に計画でき、神経を避けながら安全に手術を進めることが可能になります。
CTによる事前の情報収集は、神経麻痺などの合併症を防ぐうえでとても大切です。
◎神経に近い親知らずの特徴
神経に近い親知らずは、まっすぐに生えているケースよりも、横向きや斜めに傾いていることが多く見られます。このような状態では、根の先が神経の通る管に近接しやすくなります。
また、親知らずの根が複雑に湾曲していたり、細かく枝分かれしていたりする場合も注意が必要です。こうした形態的特徴があると、抜歯中に根の先端が神経に触れる可能性が高まるため、術前にCTで詳細を確認し、安全な抜歯方法を選択します。
■神経に近い親知らずの抜歯のリスクは?
◎一時的または永久的な神経麻痺
親知らずの根の先が神経に接している場合、抜歯の際に神経が圧迫されたり傷ついたりすることで、「神経麻痺(しんけいまひ)」が起こることがあります。症状としては、下唇やあごのしびれ、感覚の鈍さ、違和感などが代表的です。
多くの場合は一時的なもので、時間の経過とともに神経が回復し、数週間から数ヶ月で症状がおさまります。
しかし、まれに神経の損傷が深い場合には、感覚の違和感が長期間残ることもあります。こうしたリスクを最小限に抑えるためには、事前にCTで神経の位置を正確に把握し、必要に応じて専門的な外科的処置を行うことが大切です。
◎術後の腫れや痛みの強さ
神経に近い位置の親知らずは、骨を削る範囲が広くなる傾向があるため、通常の抜歯と比べて術後の腫れや痛みがやや強く出ることがあります。これは、外科的処置による一時的な炎症反応で、体の自然な治癒過程の一部でもあります。
術後は氷や冷却シートで頬を軽く冷やしたり、処方された抗炎症薬を適切に服用したりすることで、症状を抑えましょう。数日たっても腫れや痛みが強い場合や、しびれを感じる場合は、感染や神経の炎症の可能性もあるため、早めに歯科医院を受診してください。
■神経に近い親知らずを抜歯する主な方法は?
◎歯冠だけ除去する「コロネクトミー(歯冠切断術)」
神経損傷のリスクが高い場合、無理に歯根を抜かず「歯の頭(歯冠)だけを除去する」方法があります。これにより神経へのダメージを避けながら、症状の原因となる部分のみを取り除きます。根の部分は骨に埋まったまま自然に吸収されることもあるため、安全性が高い方法です。
◎2回に分けて抜歯する「2回法」
一度にすべてを抜くのではなく、まず歯冠部分のみを除去し、時間をおいて根を抜く方法です。骨や神経との距離が自然に離れるのを待つことで、より安全に処置できます。
◎CTガイドを活用した安全な抜歯
歯科用CT画像をもとに、神経との距離をミリ単位で把握し、コンピュータ上でシミュレーションを行ってから手術を実施します。これにより、切削範囲を小さく抑え、神経への影響を軽減します。
■まとめ
親知らずが神経に近い位置にある場合、抜歯には慎重な判断と精密な計画が必要です。CT撮影による事前確認や、コロネクトミーなどの負担が少ない方法を選ぶことで、神経麻痺などのリスクを大きく減らせます。
名古屋市北区の伊豆歯科では、お一人おひとりの神経の位置や骨の状態を丁寧に確認し、安全で負担の少ない親知らずの抜歯を行っています。
